第8話 ただの女
そう言えば・・・
ありさに変身中、チェンジストさんから
「ありささんって男の人が好き?それとも女性?」
と尋ねられて
「本性を隠して、無理矢理野郎で育った若い頃だったけど、やっぱ女性が好きだったな~。
でも、一般的に男が女を好きになるのとは違って、俺も本当なら、あんな女性みたいにお洒落して、着飾ってとか言う風な目で
いつも女性ばかり見てましたね。」
と答えると
「それってビアンじゃないの!だって男としてじゃなくて女の目線で女性に憧れてたわけでしょ!
で、今もそうなの?」
俺がビアン???
「いや、ビアンって言われてもピンともシャンともこないけど、今でもそういう目で女性は見てますよ。ただ・・・」
「ただ?何?」
結局、男性として生き、女性と結婚して、子供も出来て、平凡だけど幸せな家庭を持てたってことは
女として生きられなかった、筋違いな人生を歩んでしまったって意味での大きな悔いはあっても
これでよかったんだ・・・男でよかったんだと、今は思っています。
けどね・・・変身が手軽に楽しめるようになった今
ありさにチェンジするたびに強くなる思い・・・
それがチェンジストさんへの答えでした。
「ありさとしては、やっぱ女性として、男性に愛されたいし、愛したいです。」
こんにちわ~!
ありさです^^
さ!東京大冒険の締めですよ~!!
でわでわさっそく^^
自宅に帰り着いた時には、すでに午前1時を少し回っていた。
誰もいない家に上がって、明かりを点けソファーに座る。
終わった・・・
ありさの大冒険・・・終わっちゃった。
沢山の出来事が、すでに想い出となって頭の中を駆け巡る。
あ~・・・少しでも長く、このまま、ありさのままでいたい><
でも
明日・・・てか今日は朝から仕事w
ゆっくりしているわけにもいかない。
お風呂を沸かしに行き、風呂場の鏡の前で・・・立ち尽くした。
この姿で東京から帰ってきたのだ!
鏡に映るありさ・・・
あ~・・・ずっとこのままでいたい><
女でいたい><
でも、それは・・・出来るはずもない事。
なんて切ないんだろ・・・
涙がとめどもなく頬をつたった・・・
そんな思いを、ありさは断腸の思いで断ち切って、ありさの衣装を脱いだ。
チェンジストさんがやってくれた魔法のテーピングやメイク(特にアイメイク!)の技を盗むつもりでいたのに
結局、メイクを落とす時、悲しくって悲しくって、とてもそんな気にはなれず
お風呂に入ってさっさと落としてしまった。(う~~~~もったいない><)
ありさは去り、俺は野郎に戻った。
今回の東京大冒険で俺は大きな発見をひとつした。
それは
女を、ありさを装うんじゃなくて
ごくごく当たり前に、ありさは女なんだってこと。
女になりきる!女してる!ってのもぜんぜん違う。
オーストラリア人のジェシカとお話に夢中になっていた時
ありさはただただ女だった・・・
片隅に残っていた、野郎としての俺は跡形もなく消え失せて
ありさは普通に・・・
ただの女だった。